乳幼児期の目の病気 INFANTS

気付きづらい赤ちゃんの眼の病気

乳児は言葉によるコミュニケーションが難しいこともあって、目に異常や疾患があっても周囲の大人が気づけないことが起こりえます。
人間は情報収集の8割以上を視覚から取り込むと言われていますから、目は非常に重要な器官です。そのため、周囲にいるご家族が、目に関する疾患を知ることや、赤ちゃんの目に何らかの異常がないかを見守ることをおすすめします。
この時期の目の疾患は予防しにくいものが多いので、早期発見、早期治療して重症化させないことも大切です。不安や疑問があれば、お気軽に当院にご相談ください。

乳幼児期に多い主な眼の病気

眼脂(目やに)

人間の目は乾くとトラブルが起こりやすいですが、常時わずかな涙が出ていることで保護されています。涙は涙道というパイプ状の組織を通って鼻へと通じて排出されます。涙道の流れが滞っていると、目やにがでます。川の流れがせき止められると、水が濁るのと同じです。
片眼だけの涙や目やには眼科を受診してください。
また、結膜の炎症でも目やにが見られます。

原因と症状

眼脂(目やに)の原因は主に「先天鼻涙管閉塞症」と「結膜炎」の2つに分けられます。

■先天鼻涙管閉塞症

先天鼻涙管閉塞症は、生まれつき涙が流れる細い管が詰まっており、常に涙目のような状態となります。原因は判明しておりませんが、赤ちゃんの眼脂(目やに)の原因の多くが先天鼻涙管閉塞症ですので、適切な治療で良くなります。片眼のみ目やにが出ていたり、涙も片眼のみという場合は、お早めにご相談ください。

■結膜炎

結膜炎は、結膜(白目とまぶたの裏側を覆う部分)の炎症です。その原因には、ウイルスや細菌、クラミジアなどの病原体や花粉、ハウスダストによるアレルギーなどにより、白目が充血したり、目やにが出たりします。
ウイルス性の場合、流行性角結膜炎というアデノウイルスが原因で引き起こす結膜炎が有名で、人へ感染します。
その他、エンテロウイルスやコクサッキーウイルス、新型コロナウイルスも同様の結膜炎を起こすことがわかっています。

先天白内障

白内障とは、目の水晶体という部位が濁る疾患ですが、先天白内障は生まれながらに水晶体に濁りがあることを指します。また、出生時には濁りが無くても、成長の過程で発生するケースがあり、発達白内障と呼ばれます。
先天白内障の発症率は0.03%程度で、多い疾患ではありません。しかし、日本に3万人程度存在しますから、起こらない疾患とも言えません。水晶体の濁りは両眼で起こることが多いですが、片目だけに見られる例もあります。
また、濁りが部分的な部分白内障もありますが、いずれの場合も早めの受診をおすすめします。

原因と症状

先天白内障にはさまざまな原因がありますが、先天性風疹症候群(感染症)によるものが有名です。
また、遺伝(先天素因)によることもあれば、代謝性疾患(ガラクトース血症など)に関連することもあり、子宮の中で感染した感染症(トキソプラズマ、サイトメガロウイルスなど)や妊娠中の母親の病気によることもあります。その他には、外傷などが原因で起こる場合があります。

そのまま進行してしまうと、重度の弱視・斜視など視力障害に繋がる可能性が高まります。眼の中に白い濁りがあることに気づいたら、すぐにご相談へお越しください。

先天緑内障(牛眼)

先天緑内障は、隅角と呼ばれる部位の発達が不十分なことで起こります。隅角に異常があると、房水という目の中の液体が流れなくなり、そのために眼圧が上がり、視神経に圧力がかかって緑内障となるのです。
お子さんの目は大人に比べると柔らかいため、眼圧が上昇すると眼球が大きくなることから「牛眼」とも呼ばれています。

原因と症状

先天緑内障の原因は明確に判明していませんが、CYP1B1という遺伝子の変異によるケースが報告されています。

お子さんが極端にまぶしがったり、涙が通常の量を超えて出たりする症状のほか、まぶたのけいれんも起こります。3歳くらいまでのお子さんなら黒目が大きくなりますが、それ以上の年齢では黒目の拡大は見られません。
このため、まわりの大人が見て気づける症状は減りますから、先天緑内障がありながらも、視力が低下して初めて眼科にかかる例も見られます。
早期に発見したほうが治療しやすいので、ぜひ日常から気を配ってください。

未熟児網膜症

網膜は、目の中で光を感じる部位です。網膜の血管は、母体内にいる間、妊娠36週くらいには形成されています。そのため、早産で生まれた未熟児の場合は、網膜の血管が十分に発達していません。
この場合、本来の形状と異なる発達が起こることがあり、血管の枝分かれが起きたり、好ましくない方向に延びたりして、未熟児網膜症を引き起こすことがあります。

症状

未熟児網膜症は重症のお子さんから軽症のお子さんまであり、特に治療をせず自然に治った場合は視力への影響はありません。
その一方で、予定より早い出産で生まれたケースでは、屈曲異常(近視や乱視)が起こりやすい傾向がありますし、斜視(両眼の連動が取れない状態)になることもあります。ほかにも脳の疾患を併発することがあり、そこから視力が発達しづらくなる場合もあります。
治療が必要なケースでは、視力がどこまで発達するかは症例ごとに異なります。物をはっきり見る機能を持つ黄斑の発達が正常であれば、メガネで矯正可能な範囲で済むことが多いです。しかし、黄斑に異常があったり、網膜剥離が起きたりした場合は、視力に大きなダメージを受ける可能性があります。そのような場合は、定期的に通院していただく必要があります。

霰粒腫(さんりゅうしゅ)

ものもらい(関西で言う、めばちこ)とは、麦粒腫と霰粒腫が含まれている俗語です。
麦粒腫は瞼の組織に細菌感染を起こすものをいいます。
霰粒腫は脂の塊が瞼の中で詰まってしまったもので、本来は細菌感染を伴わない無菌性炎症です。
その状態では痛みはなく、眼を閉じてまぶたを指でそっとなでると、塊が指に触れます。一方細菌に感染してしまうと、まぶたが赤く腫れ、痛みを伴います。

原因と症状

原因としては、マイボーム腺と呼ばれるまぶたの内側にある脂を出す腺に分泌物が詰まることで起こります。まぶたのかゆみや、赤い腫れ、軽い痛みが主な症状として挙げられます。赤ちゃんは自覚症状を言ってくれませんので、日ごろからよく観察していただくことが大切です。
瞼が赤い・かゆがっているなどの症状が見られた際には、お早めにご相談ください。

幼少期の病気やケガはお早めにご相談ください

その他にも、お子さん同士で遊んでいて指が眼に当たったり、手持ち花火の火花が眼に入った、眼のあたりを強打したなどの外傷も多く見られます。
視力の発達段階ですので、小さい時の病気やケガは、その後の見え方や眼の状態に大きく影響を及ぼします。
「こんなことで相談していいのかな…」と躊躇せず、何かあった際には、お早めにご相談ください。

小児眼科
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